神戸市医師会医療関係の皆様へ

神戸市医師会のACP(人生会議)に関する取組み

 神戸市医師会では、平成30年に、医療を取り巻く諸問題を組織横断的な議論・解決を目指し、未来医療検討委員会を立ち上げ、その中で神戸市におけるACP(人生会議)の在り方について議論を重ねてきました。神戸市内の医療・介護に関係する31機関/団体を対象にヒアリング調査を行い、高齢者医療や救急、ACP(人生会議)等に関する課題の抽出・並びにそれらの解決案をまとめ、令和元年9月、神戸市行政へ提案書を提出いたしました。それを受けて、神戸市では、「人生の最終段階における意思決定支援」に関する有識者会議を立ち上げ、議論が行われました。本有識者会議報告書の内容を踏まえ、神戸市医師会では、神戸市行政や、関係する各種医療・介護団体等をメンバーとする検討会議に参画し、具体的なACPの取組みの検討を行っています。令和4年4月からは、医療戦略特別委員会内にACPワーキンググループを立ち上げ、集中的な議論を行うとともに関連委員会や理事会とともに組織横断的にACP(人生会議)の推進に取組んでおります。
●神戸市「人生の最終段階における意思決定支援」に関する有識者会議
●神戸市「人生会議」のすすめ
●山岸、中神、妹尾ほか.本人の意向を反映した人生の最終段階の医療・ケアの実現のために何が求められるのか?
~増加する高齢者救急搬送に係る地域包括ケア現場の課題~.日本在宅救急医学会誌.2020;4(1):61-68

「私が大切にしていること(価値観シート)」について

 「私が大切にしていること(価値観シート)」は、神戸市医師会が開発した意思決定支援ツールです。 ACP(人生会議)は、決断の結果(DNARを含む事前指示)ではなく、本人が信頼する近しい人、そして医療・ケア専門職と、信頼関係・相互理解をベースに、本人の価値観や目標を医療やケアに反映すべく話し合いの積み重ねが重要です。70%の国民が、このような話し合いの重要性を理解し賛成という意向を示すが、実際に詳細を話し合っている者は3%以下、一応は話し合っているという者も30%に留まります。そして、このような話をしていない理由で最も多かったのが「話をするキッカケがなかったから」という回答でした(厚生労働省,2017)。そこで、当会ではそのような話し合いのキッカケ作りとして、本人の価値観を侵襲なく把握するためのツール開発を行いました。なお、質問項目の選定は、医療・介護従事者、学識者、市民ら計60名のパネリストによるDelphi法(計2ラウンド)によるconsensus methodにより行いました。
 当シートの一番の特徴は、「胃ろう」や「人工呼吸器」などの具体的な治療の選好を問うものではなく、その方の価値観や人生観、大切にしていることなどを、侵襲を与えず把握できることです。あくまでもACP(人生会議)を始めるキッカケ作りを主眼としているので、家族やケアマネジャーなど誰もが聞きやすく、答えやすい内容になっています。まず、ACP(人生会議)を始める際には、その方の準備状態(レディネス)に配慮した上で開始してください。「今は書きたくない」、「今は考えたくない」方に無理にACP(人生会議)を行う必要はなく、時期を見て行ってください。また、ACP(人生会議)はその方の病状や療養場所などによって、話し合う内容が異なります。例えば、人生の最終段階における延命処置などの具体的治療の選好を問うような医師主導のACP(人生会議)を行う場合は、神戸大学作成の「これからの治療・ケアに関する話し合い」などのツールをおすすめします。
 人生の最終段階においても、人の基本的な価値観や人生観はあまり変わらないと言われています。ですので、早い段階から当シートを活用し、その方の大まかな人生観、価値観を把握することは、人生の最終段階における具体的な治療の選好の場においても有用であると考えます。また、当該者が意思を表明できなくなった時でも、当シートより価値観やお気持ちを予め把握していれば、家族や大切な人が意思を推定する資料として十分活用できると思われます。
 医師や看護師さんには日常診療や訪問診療開始時に、また、介護保険申請時に予診票とともに当シートを活用し、その内容をケアマネジャーさんや、医療・介護にかかわる人たちと共有することで、今後の治療や療養に活かされると思います。さらには研修会や、市民啓発、教育の場などに、当シートを活用いただき、皆様のかけがえのない人生がより良いものとなることを願います。
●神戸市医師会: 「私が大切にしていること(価値観シート)」(PDF:276KB)
●神戸大学: 「これからの治療・ケアに関する話し合い」(PDF:1,426KB)

価値観シート
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