■炭疽 anthrax

病原体:炭疽菌Bacillusanthracis
好発年齢:特になし
性差:なし
分布:世界的に分布。特に、アジア、南米、アフリカ

炭疽の背景
■疫学状況
●動物では世界各地で発生、ヒトでは獣疫の管理が不十分な国、特にアジア、アフリカ、南米で発生、家畜を扱う関係者に多発。

■病原体・毒素
●グラム陽性芽胞形成桿菌である炭疽菌の産生する毒素。

■感染経路

●感染動物やその加工品との接触、昆虫の刺傷による皮膚感染。まれに大気中の芽胞の吸引や、汚染食肉や水を介し感染。

■潜伏期
●感染経路により異なるが、1〜7日。

診断と治療
■臨床症状
●皮膚炭疽:ニキビ様の初期病変の後、無痛性で非化膿性の悪性膿疱が出現する。所属リンパ管炎やリンパ節炎を合併する。
●腸炭疽:腸管感染では吐き気、嘔吐、腹痛、吐血、血便、腹水の貯留など、口咽頭部感染では咽頭炎、嚥下障害、   発熱、頸部のリンパ節炎が起きる。
●肺炭疽:軽度な発熱、疲労感、倦怠感が数日続き、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱、そして胸部の軽度の疼痛が起きる。  重症では、突然の呼吸困難、チアノーゼ、昏睡を伴う失見当識が起こる。
●炭疽菌性髄膜炎:脳脊髄液中に菌体が現れ、意識消失が起こり死に至る。

■検査所見
●悪性膿疱の出現(皮膚炭疽)、縦隔リンパ節の肥大(肺炭疽)、血清抗体価の上昇、敗血症、髄膜炎。

■診断・鑑別診断
◎確定診断
●悪性膿疱、痂皮、喀痰、リンパ節、腹水、脳脊髄液または血液から培養、莢膜染色、グラム染色で炭疽菌を検出。動物接種は最終確定診断。その他、アスコリー試験、γ−ファージ溶菌試験、間接蛍光抗体法(IFA)、PCRによる診断も可能。

◎鑑別診断
●皮膚炭疽は火傷の初期病変、類丹毒、潰瘍、梅毒性下疳などと、腸炭疽は腸管感染症と、口咽頭部の病変はレサ球菌性咽頭炎や咽頭の腫瘍などと、肺炭疽の初期症状はインフルエンザ様。

■治療
●ペニシリンなどの抗生剤を感染初期に大量投与。その他、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、テトラサイクリン、 ゲンタマイシンなど。

■経過・予後・治療効果判定
●皮膚炭疽の約80%は10日程度で治癒するが、治療しないと敗血症などになりやすく、肺炭疽では24時間以内に死亡。治療しても、口咽頭部感染では致死率は約50%、髄膜炎ではほぼ100%。

■合併症・続発症とその対応
●リンパ節炎、敗血症、毒素性ショック。

■2次感染予防・感染の管理
●濾過滅菌培養上清がワクチンとして一般的で、接種時期は随時。接種方法は米国では、2週間ごとの3回皮下注後、半年ごとの3回皮下注、さらに1年ごとの追加接種。
●動物へのワクチン計画が、ヒトの炭疽の予防に最も重要である。
●汚染土壌の消毒。
●ヒトからヒトへの感染は報告がない。